RECOSO主任研究員大浦亮三が飲食店経営のヒントについて分かりやすく解説します。
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連載コラム「繁盛店への道」
第6回 クレームは最大のチャンス
先日ある異業種の方とお話をしておりまして、 このコラムに書かれていることは業種は違うが大変参考になると言っていただきました。 確かにこのコラムでは飲食店についてお話をしていますが、 他の業界の方にも取り入れられるような普遍的な面もあるかもしれません。 大変ありがたく励みになります。 さて、今回はクレーム処理についてのお話です。 サービス業である限りお客様からのクレームは必ずあります。 お店側としてはそのクレームに対してどう向き合うかが大きなカギといえるでしょう。 ある知り合いのAさんからこんなことがあったと聞きました。 都内のあるJRの駅からほど近い場所にある珈琲店でのことです。 大手メーカー系のフランチャイズチェーンです。 Aさんがお店の中に入っても「いっらっしゃいませ」の一言もありません。 席に付き、しばらくするとウエイトレスさんがお冷をもって注文を聞きに来ました。 注文を済ませ店内を観察してみると、 平日の午後ということもあり、客層は比較的高齢者の方と女性客が多く6割がた席が埋まっています。 従業員は先ほどのウエイトレスとカウンターの中に男性が1名。ネームプレートから店長さんだとわかります。 注文した珈琲を飲みながら店内の様子を見ておりましたが、何か違和感を感じるのだそうです。 その違和感の原因は「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の声が全く聞こえないことにありました。 冒頭に書いたようにAさんが来店した時もそうでしたが、 そのほかのお客様が来店しても、また帰るときにもこの二人の店員は挨拶が全くないのです。 40分ほどしてAさんが帰るまで、この二人から元気な挨拶が聴かれることはありませんでした。 会計時は店長さんでしたが、やはり挨拶もなく淡々とお会計をしていましたので、 「余計なことかもしれないが、もう少し元気に挨拶をしたらどうか。」 「お札を取る前にまず、ありがとうございましたと言いましょうよ。客商売の基本ですよ」 といった事を言ったそうですが、 店長さんの反応は謝罪するわけでもなく、ただうなずくのみです。 結局お店を出る時まで「ありがとうございました」の挨拶は聴くことができませんでした。 そこでAさんは少々怒りが込み上げてきたらしく、そのお店を出た直後にそのチェーンの本部に電話をして 事のいきさつを説明して改善してほしいと訴えたそうです。 電話に出た担当者は謝罪の上、 「該当店に確認して事実であればきちんと指導し、今後このようなことがないようにしたい」 とのことであったということです。 さて前段階が少々長くなりましたが、 ここからが今回のポイントとなるお話です。 Aさんのようにはっきりとクレームを入れたり電話をしたりするお客様は少数派です。 ほとんどの場合にはそのようなクレームをしたりせず、 黙ったままお店を後にして二度とそのお店へは行かなくなるだけです。いわゆるサイレントクレーマーと呼ばれるのはこのような人たちです。 その中には知人友人たちにその出来事を話してしまう人もいることでしょう。 今の時代、メールやSNSを通じてこの手の話は瞬く間にネットから拡散していくことにもなりかねません。 Aさんのようにはっきりとクレームを言うお客様は、実はお店にとって最大のチャンスでもあるのです。 その理由は2つあります。 一つ目はクレームによってお店の問題点が明らかになることです。 外食業界においては特に現場のお店では毎日の業務がルーティンワークになりがちで、 自分たちの行っていることを客観的に見つめる機会が少ないのが現実です。 上記の例でもその珈琲店のスタッフは挨拶するのが当たり前のことだというのはきっとわかっているはずです。 もしかしたら本人たちはきちんと挨拶しているつもりでいるのかもしれません。 でもこのクレームのおかげで実は挨拶していない失礼なお店だとお客様に思われていることがわかったわけです。 あとはそれを改善すればいいだけの話なのです。 でもクレームがなければいつまでも失礼なお店とお思われてお客様が減り続けていたかもしれません。 二つ目はクレームを言うお客様は実は上得意様の卵だからです。 ほとんどの場合クレームを言うお客様は、実はそのお店の大ファンであることが多いのです。 大好きなお店だからこそ、気に入ったお店だからこそまた利用したいと思っています。 快適に利用したいから不満点を改善してほしいと強く思っています。 だからこそクレームを入れるのです。 二度と行かないと思うなら普通はわざわざクレームを言ったりはしません。 Aさんもそのお店は駅からも近く、雰囲気もいいのでまた行きたいと思ったそうです。 何回も言いますが、また行きたいからクレームを入れるのです。 つまりその不満点が改善されれば、クレームを真摯に受け止め原因を追究しそして改善することができたなら そのお客様はきっとまたそのお店に足を運ぶことでしょう。 このようにクレームを言うお客様はお店にとって大変ありがたいことなのです。 まさにピンチの裏にはチャンスありなのです。 クレーム処理では以下の5項目がポイントです。 ①お客様の言い分は必ず最後まできちんと聞く。 ②明らかな非がある場合には素直に謝罪する。 ③その場で確認できないことは後日調査の上報告することを約束する。 ④改善点がある場合にはどのようなことを行ったかを具体的にお知らせする。 ⑤お客様のご指摘のおかげでお店が改善できたことに対してお礼を述べて再度のご来店をお願いする。 最後にもう一度述べておきます。 クレームは最大のチャンスであると。 |
第5回 店側の都合でする接客の実例
このテーマはお客の立場でなくお店の都合やそのスタッフの都合で接客がなされているという事ですが、こんなお店がありました。 飲食店に行くとテーブルまで案内されますよね。高級店だけではなくファミリーレストランや居酒屋などでも今ではそれが当たり前のようになされています。ある大手チェーンの居酒屋で経験した話ですが、そのお店は入り口で靴を脱いで入るお店で、私が来店し靴を脱ごうとしていたときに、お店のスタッフが「いらっしゃいませ」とやってきました。何名かと聞かれたあと、「ご案内します」と言われた時は、私はまだ靴を靴箱に入れているときでした。そして案内してもらおうと振り返ったらそのスタッフはもういません。ホールに入りましたがやはりスタッフの姿は見当たりません。その場でキョロキョロしていたら、遠くのほうでさっきのスタッフがこちらを見ていました。そちらのほう行き、スタッフに「どの席?」と聞くとそのスタッフはあごをしゃくり上げながら「ここです」。 この場合の飲食店スタッフとしての対応には大きな問題がありますが、これもスタッフがお客の立場にない典型例です。ここまでひどくなくてもまともなご案内ができていない事がよくあります。お客に席の希望を聞き、なるべく期待に沿うようなテーブルに案内する。お客の歩調にあわせながらすすむ。段差等がある場合はさりげなく注意を促す等々。これらはどのお店でもマニュアルに似たような事が記されています。ですが完璧に実行されているのは居酒屋やファミレスクラスだとほとんど見かけません。この場合のご案内をきちんとするポイントはお客を気にする、お客をよく見て観察するだけです。ただそれだけの事ができないのならご案内などやめてしまえばいいのです。 そもそもファミレスクラスでのご案内はお客にとってはあまりメリットがありません。自分の好きなテーブルに着くほうがいいのですから。ではなぜ案内されるのかと言うとお店側の理由によるものです。例えば混んでいるときに少人数で大きなテーブルを使われたくない、スタッフの配置状態によりお客が均等になるように調整するため、お客の来店をスタッフが管理するためなどの理由によりご案内をしているのです。明らかに席が空いているのにいつまでも案内されず待たされた経験は皆さんにもあるのではないでしょうか。忙しくてテーブルをすぐにかたずけられないから、お客を待たせておくというわけです。したがっておまりお客にとってメリットのないご案内をするのなら、もっとお客に好印象を与える事をすべきなのです。 お店に入って最初にお客と接する場所がご案内なのですから、お店の顔として、また気持ちよく食事をしてもらえるその第一歩として、お客の立場で考えたご案内を考える必要があると思います。 |
第4回 サービスからかけ離れたお店の実例
第3回 サービスのよいお店とは
第2回 接客がクレームになる場合
今回はまず接客とクレームについてお話します。一般的に飲食店で「サービスが悪い」とお客が感じる時とはどんな場合でしょうか。この場合はほとんどが前述の「接客」ができていない場合です。正確に言うと「接客が悪い」のです。
・あいさつがない
・テーブルの案内で待たされる
・オーダーをなかなか取りに来ない
・料理が出るのが遅い
・スタッフを呼んでもすぐに来ないあるいはいない
・etc
これらは間違いなくお客に「サービスが悪い店」と思われてお店に良い印象をもたれません。但しすぐにクレームになるかと言うとほとんどの場合はそうはなりません。上記のようなことがあってもよほどのことがない限り大半のお客は黙っていて、おおひろげにクレームを付けることなくお店を後にします。このようなお客を「サイレントクレーマー」と呼んでいます。実はお店にとってこのことが大問題なのです。もしクレームが出たならそれに対して適切な処理をすることによって対応が可能です。それによって改善もできます。しかしながら「サイレントクレーマー」の場合は対応のしようがありません。お店としてもその原因を自覚することも改善することもできません。知らず知らずにどんどん病気に蝕まれていくのと同じように、お店のイメージが悪くなっていくのです。
但しこの「接客」はマニュアルやスタッフ教育の整備によって、比較的容易に実行できます。前回も述べたように「接客」はお客に対して普遍的なものであるために実行しなければならない項目とそのためのポイントを明確にすれば誰にでも実行することができるからです。そうすることによってクレームが起こったり、サイレントクレーマーが出てきたりすることをある程度防ぐことができます。要は基本的なスタッフ教育、飲食店スタッフとしてのしつけができているかいないかということなのです。ですがこの飲食店スタッフのしつけすらできていないお店が多いのですが、それはまた後日にお話ししましょう。
では「サービスが良い」とお客が感じる場合はどうでしょう。この場合の「サービス」とは、前回の「接客とサービス」の「サービス」の部分が関係してきます。次回はこの「サービス」の話です。
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第1回 接客とサービスはどう違うのか
まず第1回目はお店のサービスについてです。まず皆さんは「接客」と「サービス」はどう違うと思いますか?そんなのどちらも同じでしょと思うかもしれませんが、実はこの二つの意味は大きく違います。
「接客」は言うなれば業務であり、例えば「いらっしゃいませ」とか「ありがとうございました」とかの通常の挨拶であったり、ウェートレスが注文を取りにきたり、料理を運んできたりといったものです。言い換えるとこのような「接客」は飲食店というサービス業においては必ず実行しなければならないものであり、やらなければクレームになったりお客を不愉快にさせたりします。皆さんがもしどこかのお店に行って店員から「いらっしゃいませ」と言われなければどう思いますか?少なくともいい気分にはなりませんよね。
他方「サービス」はお客の立場で考えねば実行することはできません。例えばお客が来店したときにそのお客がどのような人たちなのかを考えて最適なテーブルに案内する、恋人同士なら眺めのよい静かな席に、子供連れの家族客なら少々騒いでも平気な大きめのテーブルに、ビジネスのお客なら商談しやすい周りから離れた静かなテーブルに。これがお客の立場で仕事をするということでありサービスの初歩であるといえます。
分かりやすく言うと「接客」はどのお客にも普遍的なものであり「サービス」はお客一人一人によって違うものなのです。なぜ最初にこの話をするかというと、実は飲食店ではこの「接客」と「サービス」がごっちゃになっていたり、「サービス」はおろか「接客」すら満足にできていないお店が非常に多いからなのです。私は専門家ですから、飲食店に対してもちろん厳しい目は持っていますが、それを抜きにしても「あれ!??」と思うことが最近よくあります。次回はそのエピソードをお話します。
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