先日ある異業種の方とお話をしておりまして、 このコラムに書かれていることは業種は違うが大変参考になると言っていただきました。 確かにこのコラムでは飲食店についてお話をしていますが、 他の業界の方にも取り入れられるような普遍的な面もあるかもしれません。 大変ありがたく励みになります。 さて、今回はクレーム処理についてのお話です。 サービス業である限りお客様からのクレームは必ずあります。 お店側としてはそのクレームに対してどう向き合うかが大きなカギといえるでしょう。 ある知り合いのAさんからこんなことがあったと聞きました。 都内のあるJRの駅からほど近い場所にある珈琲店でのことです。 大手メーカー系のフランチャイズチェーンです。 Aさんがお店の中に入っても「いっらっしゃいませ」の一言もありません。 席に付き、しばらくするとウエイトレスさんがお冷をもって注文を聞きに来ました。 注文を済ませ店内を観察してみると、 平日の午後ということもあり、客層は比較的高齢者の方と女性客が多く6割がた席が埋まっています。 従業員は先ほどのウエイトレスとカウンターの中に男性が1名。ネームプレートから店長さんだとわかります。 注文した珈琲を飲みながら店内の様子を見ておりましたが、何か違和感を感じるのだそうです。 その違和感の原因は「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の声が全く聞こえないことにありました。 冒頭に書いたようにAさんが来店した時もそうでしたが、 そのほかのお客様が来店しても、また帰るときにもこの二人の店員は挨拶が全くないのです。 40分ほどしてAさんが帰るまで、この二人から元気な挨拶が聴かれることはありませんでした。 会計時は店長さんでしたが、やはり挨拶もなく淡々とお会計をしていましたので、 「余計なことかもしれないが、もう少し元気に挨拶をしたらどうか。」 「お札を取る前にまず、ありがとうございましたと言いましょうよ。客商売の基本ですよ」 といった事を言ったそうですが、 店長さんの反応は謝罪するわけでもなく、ただうなずくのみです。 結局お店を出る時まで「ありがとうございました」の挨拶は聴くことができませんでした。 そこでAさんは少々怒りが込み上げてきたらしく、そのお店を出た直後にそのチェーンの本部に電話をして 事のいきさつを説明して改善してほしいと訴えたそうです。 電話に出た担当者は謝罪の上、 「該当店に確認して事実であればきちんと指導し、今後このようなことがないようにしたい」 とのことであったということです。 さて前段階が少々長くなりましたが、 ここからが今回のポイントとなるお話です。 Aさんのようにはっきりとクレームを入れたり電話をしたりするお客様は少数派です。 ほとんどの場合にはそのようなクレームをしたりせず、 黙ったままお店を後にして二度とそのお店へは行かなくなるだけです。いわゆるサイレントクレーマーと呼ばれるのはこのような人たちです。 その中には知人友人たちにその出来事を話してしまう人もいることでしょう。 今の時代、メールやSNSを通じてこの手の話は瞬く間にネットから拡散していくことにもなりかねません。 Aさんのようにはっきりとクレームを言うお客様は、実はお店にとって最大のチャンスでもあるのです。 その理由は2つあります。 一つ目はクレームによってお店の問題点が明らかになることです。 外食業界においては特に現場のお店では毎日の業務がルーティンワークになりがちで、 自分たちの行っていることを客観的に見つめる機会が少ないのが現実です。 上記の例でもその珈琲店のスタッフは挨拶するのが当たり前のことだというのはきっとわかっているはずです。 もしかしたら本人たちはきちんと挨拶しているつもりでいるのかもしれません。 でもこのクレームのおかげで実は挨拶していない失礼なお店だとお客様に思われていることがわかったわけです。 あとはそれを改善すればいいだけの話なのです。 でもクレームがなければいつまでも失礼なお店とお思われてお客様が減り続けていたかもしれません。 二つ目はクレームを言うお客様は実は上得意様の卵だからです。 ほとんどの場合クレームを言うお客様は、実はそのお店の大ファンであることが多いのです。 大好きなお店だからこそ、気に入ったお店だからこそまた利用したいと思っています。 快適に利用したいから不満点を改善してほしいと強く思っています。 だからこそクレームを入れるのです。 二度と行かないと思うなら普通はわざわざクレームを言ったりはしません。 Aさんもそのお店は駅からも近く、雰囲気もいいのでまた行きたいと思ったそうです。 何回も言いますが、また行きたいからクレームを入れるのです。 つまりその不満点が改善されれば、クレームを真摯に受け止め原因を追究しそして改善することができたなら そのお客様はきっとまたそのお店に足を運ぶことでしょう。 このようにクレームを言うお客様はお店にとって大変ありがたいことなのです。 まさにピンチの裏にはチャンスありなのです。 クレーム処理では以下の5項目がポイントです。 ①お客様の言い分は必ず最後まできちんと聞く。 ②明らかな非がある場合には素直に謝罪する。 ③その場で確認できないことは後日調査の上報告することを約束する。 ④改善点がある場合にはどのようなことを行ったかを具体的にお知らせする。 ⑤お客様のご指摘のおかげでお店が改善できたことに対してお礼を述べて再度のご来店をお願いする。 最後にもう一度述べておきます。 クレームは最大のチャンスであると。 |
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