解説 「基礎からわかる飲食店マーケティング」

投稿日: Jun 14, 2010 9:1:30 AM

マーケティングは難しくない

私たちはどのような時に外食しようと思うのでしょうか。また、誰と飲食店に行きますか。どんな店に行きますか。このことはすでに外食産業に携わっている人、将来外食産業で身を立てたい人は常に考えていかなければならない点です。これを知ることにより来店するお客様のニーズを知る手がかりとなるのです。

もちろん答えは一つではありません。

仲の良い友人と、または恋人もしくは両親や家族、会社の同僚などその時によって様々でしょう。そして、一緒にいる人や利用目的によって選ぶお店を自然に変えているのです。

これを多方面から分析し、立地や顧客層など店を作るための要素を知ることをマーケティングと称しています。

マーケティングを怠ると立地と顧客層が合ってなかったり、料理と雰囲気がちぐはぐな店が出来上がってしまいます。そんなお店じゃ儲からないのは目に見えて分かりますよね。

ベースマーケティングとソフトマーケティング

飲食店のマーケティングにはベースマーケティングとソフトマーケティングの2つがあります。この2つを合わせると一つのお店が出来上がるのです。

ベースマーケティング・・・立地の選択、ターゲットとなる顧客層の選定など店の基礎となるものを知ること。

ソフトマーケティング・・・外装、内装、料理、サービス、空間演出など店のウリや雰囲気を決定付ける要素を知ること。

立地と顧客の相関関係

お店を出そうと思ったら、まず何をすればよいのでしょうか。色々な考え方がありますが、基本的にはお店のコンセプトを決定し、それに合った場所(立地)とターゲット(顧客層)を決めます。この二つはお店を作る上で最も重要なポイントです。

例えば、ビジネス街で主婦をターゲットにしたカフェを開いても予想していた顧客層は期待できません。主婦が好みそうな料理や雰囲気の店にサラリーマンは入りづらい印象を持つのではないでしょうか。すると店は閑古鳥ばかりが鳴いている状態になってしまうのです。

このように立地と顧客層は非常に深い相関関係を持っています。立地を決定したらそこに多く存在しているだろう顧客層を決めます。逆も然りです。まず顧客層を決定したら、その顧客層が多く存在すると思われる場所を決めるのです。

【顧客が何をもとめているか?】

まずお客様が何を求めてお店に来店するかを考えてみて下さい。飲食店ですから当然料理や飲み物、アルコールを求めて来店してくる事は確かです。では顧客は数ある飲食店の中からあなたのお店を選ぶ理由はなんなのでしょうか。あるいはあなたのお店が選ばれない理由はなんなのでしょうか?この飲食店顧客心理を理解しないと正しい経営は出来ません。

例えば私たちがお腹が空いて飲食店を利用する場合、個人営業の大衆食堂とフランス料理店とでは顧客が求める料理の内容も質もあるいはサービスもお店の雰囲気も全く違ったものになります。極端な例ですがフランス料理店に来店したときに割烹着を着たおばちゃんが「いらっしゃい」と出てきたらそれだけで驚きますよね。大衆食堂でタキシードを着た店のご主人に「ワインはいかがいたしますか」と聞かれても同じです。

つまり顧客はそれぞれのお店に対してあらかじめイメージした期待感を持って来店します。この期待感とは「料理、サービス、店の雰囲気、そして値段etc」なのです。この期待感を満足させる事がまずは売れる店作りの第一歩なのです。

まず、顧客が何を求めて来店してくるのかを知ることが重要となります。店主が常連のお客様と大声で笑って話しているのでは新たなリピーターを獲得するのは難しい事はきっと誰でもわかる事でしょう。お客様は何を求めてあなたのお店に来店したのでしょう?

①非日常的な食事を楽しむ為

②くつろぎを楽しむ為

③商談の為

④仕事中の食事の為 など

仕事中の食事の為ならオーダーがきちんととられ、料理が素早く提供されれば問題ないでしょう。しかし、食事を楽しんだり、くつろぎを求めたり、商談の為なら上記のようなお店はニーズを提供できていない事になります。

ところが、あなたがお客様の求めるニーズに少しでも目を向ける事ができたなら・・・

それはお客様にとって大きな変化があることでしょう。そこで、上に挙げたことを例に分析してみます。

①非日常的な食事を楽しむ為の人には

料理の質を最高の状態で提供できる。それは、冷たいものは冷たい状態で、暖かいものは暖かい状態で出せる事。新鮮な食材が使ってあるなど。もちろんこれは、非日常の食事を楽しむ人だけのものではありません。当然のことを提供するまでです。サービスに気を使う。例えば、来店した時点での対応がスムーズである。オーダーが適当な時間に取られる。料理が待ちすぎずに提供される。また、そこで料理についてなどの会話を少しでも交わす事でお客様の満足度も上がります。お店の雰囲気(外装、内装、照明、景色など)を楽しんでもらう。そのためには、壁が汚れていたり、テーブルが傾いていたり、照明が暗すぎたり、ガラスが曇っていたりでは無理な事ですね。

②くつろぎを求める人には

暖かいもの、冷たいものをすぐ提供できる。落ち着いた対応で接することがお客様の気分を良くすることでしょう。今日の天気についてなど一言でも会話するのもいいかもしれません。もちろんそれは、雑誌などを一人で読む事を楽しもうとするお客様にとっては邪魔な事になってしまいますので、気を付けなければなりません。ここでもお店の雰囲気は大事になってきます。

③商談中の人には

商談の邪魔にならないような配慮、例えば他のお客様との会話を控えめにする。また、なるべく他のお客様の近くに案内しないなどが必要となってくるのは言うまでもありません。

この他にも、家族との食事であったり、恋人との語り合いであったりと、その求めるものは大きく変わってきます。

人は皆、自分のことを大切に思ってくれる場所を捜し求めるものです。効果的なリピーターを作る為にはその目的にあった必要な場所を提供する事です。その為にはお客様が何を求めているのかを見る目を養っていくことが必要です。

顧客が求めているものを主観的、客観的に知ることも重要です。そこには「商圏」を知ることも含まれてくるでしょう。あなたが作りあげている「場所」をアピールしていってください。

【期待感のギャップと顧客満足度】

顧客の期待感のギャップはお店にとってよい方向に働く場合と悪い方向に働く場合があります。悪い方向に働くとお客様は期待を裏切られたとしてそのお店の評価が下がりますし顧客満足度も低下します。よい方向に働けばお店の評価はアップし顧客満足度もあがります。お店の経営者側から考えた場合いかにして顧客の期待感をよい方向に裏切れるかという事です。

お店に来店するお客様は利用する飲食店に対して期待感をもって来店すると述べましたが、この点をもう少し掘り下げて考えてみましょう。顧客が求める期待感は高級フランス料理店に対してと大衆定食屋に対してとでは明らかに違います。

その期待感は初めて来店する顧客と何回も来店した顧客との場合でも違ってきます。初めてのお店でよいイメージをもった場合、顧客は次回来店時には前回以上の期待感を持って来店するのです。ここで最低限この期待感を裏切らない事が重要になります。ここで失敗すると顧客はそのお店に失望し非常に悪い印象を持ってしまいます。リピーターを多く持つ難しさはこの点にあるといえるのです。

特にチェーン店ではこの点を気をつけなければなりません。顧客にとっては同じチェーン店であればどのお店であっても同じ期待感を持って来店します。同じチェーン店のA店とB店の場合、A店に初めて来店した時の顧客満足度が大きければ、そのA店での大変よい印象と期待感を持って次にはじめて行くB店に来店してしまうのです。つまりB店に来店した時点ではA店に来店した時以上の期待感を持っていることになります。B店でもその期待感を満足してもらう事ができればさらにそのチェーン店全体の顧客満足度は上がり顧客の信用と信頼が広がっていくのです。

逆にB店での期待感が満足いくものでなく顧客満足度が得られなければ、B店のみならずそのチェーン店全体の顧客満足度までが下がってしまいます。チェーン店経営の難しさは実は個人飲食店の何倍もあるのです。